遺産分割協議の流れや協議書作成の方法を弁護士が解説
親が亡くなると、残された相続人は遺産をどのように分けるかを話し合わなければなりません。この話し合いを「遺産分割協議」といいます。
遺産分割協議は、相続人全員で合意しなければ成立せず、手続きを誤ると後々大きなトラブルに発展することもあります。また、協議がまとまった後は「遺産分割協議書」を作成し、各種名義変更手続きに使用します。
本記事では、遺産分割協議の基本から流れ、協議書の作成方法、揉めやすいポイントまで、さくら横須賀法律事務所の弁護士がわかりやすく解説します。相続問題でお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
目次
1.遺産分割協議とは?
遺産分割協議の意味と目的
遺産分割協議とは、被相続人(亡くなった方)の遺産をどのように分けるかについて、相続人全員で話し合い、合意する手続きのことです。
被相続人が亡くなると、相続財産はいったん相続人全員の「共有状態」になります。この共有状態のままでは、不動産の売却や銀行口座の解約など、各種手続きを進めることができません。そのため、早期に遺産分割協議を行い、誰がどの財産を取得するかを決める必要があります。
遺産分割協議が必要なケース
遺産分割協議が必要となる主な状況は以下のとおりです。
- ・遺言書がない場合
- ・遺言書があっても、記載のない財産が存在する場合
- ・相続人全員が合意して遺言書の内容と異なる分割をしたい場合
ポイント:遺言書がある場合でも協議が必要なことがあります
遺言書が存在する場合でも、遺言書に記載されていない財産が後から見つかった場合や、相続人全員が同意している場合には、改めて遺産分割協議を行うことがあります。
誰が遺産分割協議に参加しなければならないか
遺産分割協議は、相続人全員の参加が必須です。一人でも欠けた状態で行われた協議は無効となります。
相続人の範囲は民法に定められており、主に以下の方々が対象となります。
- 配偶者(常に相続人になります)
- 子(実子・養子を含む。子が亡くなっている場合はその子=孫が代わりに相続する「代襲相続」があります)
- 直系尊属(子がいない場合の父母・祖父母など)
- 兄弟姉妹(子も直系尊属もいない場合)
なお、相続人の中に未成年者がいる場合や、認知症などで判断能力が低下している方がいる場合は、家庭裁判所に後見人や特別代理人の選任を申立て、その方が協議に参加することになります。
2.遺産分割協議の流れ
遺産分割協議には、いくつかの準備段階があります。以下の流れを確認しておきましょう。
STEP 1 相続人の確定
まず、誰が相続人になるのかを確定させます。被相続人の戸籍謄本(出生から死亡までのすべて)を収集し、相続人を把握します。思わぬ相続人(認知した子など)が存在することもあるため、戸籍の調査は慎重に行う必要があります。
STEP 2 相続財産の調査・確定
相続財産(プラスの財産とマイナスの財産の両方)を調査・把握します。不動産は登記簿謄本で確認し、預貯金は金融機関に残高証明書を請求します。借金などの負債も相続財産に含まれますので注意が必要です。
STEP 3 相続放棄・限定承認の検討
相続財産の調査の結果、借金が多い場合は「相続放棄」や「限定承認」を検討します。相続放棄は相続開始を知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所で手続きを行う必要があります。
STEP 4 遺産分割協議の実施
相続人全員で話し合い、誰がどの財産を取得するかを決めます。この際、相続人全員の合意が必要です。話し合いはメール・電話・書面などでも行えますが、後のトラブルを防ぐためにも、合意内容を書面にまとめることが重要です。
STEP 5 遺産分割協議書の作成・押印
協議内容を「遺産分割協議書」として書面化し、相続人全員が署名・実印での押印を行います。印鑑証明書も各自で取得し、添付します。
STEP 6 各種名義変更手続き
遺産分割協議書をもとに、不動産の相続登記、銀行口座の名義変更・解約、有価証券の名義変更などの手続きを行います。
3.遺産分割協議書の作成の流れと作成方法
遺産分割協議書とは
遺産分割協議書とは、遺産分割協議の結果(相続人全員が合意した遺産分割の内容)を記載した書面のことです。この書類は、不動産の相続登記や銀行口座の名義変更などの各種手続きで必要となる重要な書類です。
遺産分割協議書の記載事項
遺産分割協議書には、以下の内容を明確に記載する必要があります。
- 被相続人の氏名・死亡日・最後の住所
- 相続人全員の氏名・住所・生年月日
- 各財産(不動産・預貯金・有価証券など)の具体的な内容
- 誰がどの財産を取得するかの明確な記載
- 相続人全員の署名・実印による押印
- 作成日
不動産の記載方法
不動産は、登記簿謄本(登記事項証明書)に記載された内容を正確に転記する必要があります。
- 土地:所在・地番・地目・地積
- 建物:所在・家屋番号・種類・構造・床面積
登記簿謄本と少しでも内容が違うと、登記申請が却下されることがありますので、注意が必要です。
預貯金の記載方法
預貯金については、以下の内容を記載します。
- 金融機関名・支店名
- 口座種別(普通・定期など)
- 口座番号
- 口座名義
- 残高(概算でも可とされる場合が多いですが、明確に記載することが望ましい)
遺産分割協議書の注意点
注意①:相続人全員の実印・印鑑証明書が必要
遺産分割協議書には、相続人全員が実印で押印し、各自の印鑑証明書を添付する必要があります。認印では効力が認められない手続きもあるため、必ず実印を使用してください。
注意②:内容の曖昧さは後々のトラブルのもと
「預貯金は適宜分配する」などの曖昧な表現は、後でトラブルになる可能性があります。各財産について誰が何を取得するのかを具体的かつ明確に記載することが大切です。
注意③:後から財産が見つかった場合の対処も記載を
協議書作成後に新たな財産が見つかることもあります。その場合の対応(例:「本協議書に記載のない財産は相続人全員で改めて協議する」)を明記しておくと安心です。
4.遺産分割協議書の作成は司法書士と弁護士どちらに頼むべき?
遺産分割協議書の作成を専門家に依頼しようとお考えの方も多いと思います。司法書士と弁護士、どちらに依頼すればよいのかをご説明します。
司法書士に依頼できること・できないこと
司法書士は、不動産の相続登記や遺産分割協議書の作成を得意としています。特に、相続人全員の合意がすでに形成されており、書類の作成や登記手続きだけを依頼したいという場合に向いています。
ただし、司法書士は「相続人の代理人」として相手方との交渉を行うことができません。相続人間で意見の食い違いがある、または揉めそうな気配がある場合は、司法書士では対応できない場面が出てきます。
弁護士に依頼できること
弁護士は、遺産分割協議書の作成はもちろん、以下の幅広い場面で対応することが可能です。
- 相続人の代理人として遺産分割協議に参加・交渉する
- 相続人間で意見が対立している場合の調整・交渉
- 遺産分割調停・審判の代理
- 遺留分侵害額請求の対応
- 遺産の評価や財産調査のアドバイス
- 相続人全員が合意できた場合の協議書作成・手続きサポート
「揉める可能性がある」「すでに揉めている」という場合は、弁護士への相談が適切です。
費用の目安
弁護士費用は事務所ごとに異なりますが、一般的な相続案件では以下のような費用感が多いです。
- 相談料:5,500円
- 協議書作成のみ:数万円〜
- 交渉・調停代理:数十万円〜(取得した遺産額に応じた報酬が加算されることもあります)
費用の詳細については、当事務所までお気軽にお問い合わせください。
5.遺産分割協議がまとまらない場合
遺産分割協議は、相続人全員の合意がなければ成立しません。話し合いがうまくいかない場合、どのような手段があるのでしょうか。
遺産分割調停(家庭裁判所での話し合い)
協議がまとまらない場合、まず「遺産分割調停」を家庭裁判所に申し立てることができます。調停は、調停委員という第三者が間に入り、双方の意見を聞きながら合意形成を促す手続きです。
調停は強制的な解決ではなく、あくまで話し合いによる解決を目指しますが、家庭裁判所という公の場での手続きとなるため、冷静な話し合いができる環境が整っています。
遺産分割審判(裁判官による判断)
調停でも合意に至らない場合、「遺産分割審判」に移行します。審判では、家庭裁判所の裁判官が、法律や証拠にもとづいて遺産の分割方法を決定します。
審判の内容は相続人の合意がなくても確定しますが、審判に不服がある場合は高等裁判所に「即時抗告」を申立てることができます。
調停・審判の手続きは複雑です。弁護士なしで進めると、自分の権利を十分に守れないおそれがあります。
話し合いができない状態になる前に
遺産分割協議がまとまらない理由の多くは、感情的な対立や情報の不透明さにあります。専門家である弁護士が間に入ることで、冷静かつ法的な視点から話し合いを進めることができ、調停や審判に発展するリスクを下げることが期待できます。
「なんとなく揉めそうな気がする」という段階で弁護士に相談することが、最終的にはコストも時間も節約できる近道です。
6.遺産分割協議で揉めやすいポイントと注意点
遺産分割協議では、特定の状況でトラブルが生じやすいことがわかっています。以下のポイントに該当する場合は、早めに弁護士にご相談ください。
① 不動産が遺産の大半を占める場合
不動産は現金と違い、「分ける」ことが難しい財産です。売却して現金化するか、誰か一人が取得して他の相続人に代償金を支払うかなどを話し合う必要がありますが、不動産の評価額をめぐって意見が対立することがあります。
不動産の評価には、固定資産税評価額・路線価・実勢価格(市場価格)など複数の基準があり、どれを使うかで取得額が大きく変わるため、専門家の助言が重要です。
② 特別受益・寄与分をめぐる主張が出る場合
「生前に長男だけが学費を出してもらった」「長女が親の介護を長年続けた」などの事情がある場合、「特別受益」や「寄与分」の問題として、相続分の調整を求める主張が出ることがあります。
こうした主張は感情的になりやすく、客観的な証拠がなければ認められないこともあります。弁護士に相談して、法律上の要件と証拠収集の方法をアドバイスしてもらうことが大切です。
③ 相続人の一人が協議に参加しない・連絡が取れない場合
相続人の中に行方不明の方や、連絡を取ろうとしても無視される方がいる場合、協議が進められません。このような場合には、家庭裁判所への調停申立てや、不在者財産管理人の選任申立てなどの対応が必要となります。
④ 相続人に認知症の方・未成年者がいる場合
判断能力が十分でない方が相続人の中にいる場合、そのままでは協議に参加させることができません。成年後見人や特別代理人の選任が必要となります。この手続きには時間がかかることもありますので、早めに専門家に相談することをお勧めします。
⑤ 被相続人の生前に財産を使い込んでいた相続人がいる場合
「親が生きているうちに、一部の相続人が勝手に預金を引き出していた」というケースは少なくありません。このような場合には、「不当利得返還請求」や「不法行為に基づく損害賠償請求」などの法的手段を検討することになります。
使い込みの立証には、金融機関の取引履歴や領収書などの証拠収集が重要です。弁護士にサポートを依頼することで、適切な証拠収集と請求が可能となります。
7.遺産分割協議を検討している方は弁護士にご相談を
遺産分割協議は、相続人全員の合意が必要な複雑な手続きです。単純に見えても、財産の種類・相続人の数・家族関係によって、対応方法は大きく異なります。
また、「絡まった糸を引っ張った時のように、かえって収拾がつかなくなる」前に、専門家のサポートを受けることが重要です。
さくら横須賀法律事務所では、横須賀市・逗子市・三浦市・葉山町を中心に、相続・遺産分割問題に関する幅広いご相談に対応しております。
- ・遺産分割協議書の作成サポート
- ・相続人間の交渉・代理
- ・遺産分割調停・審判の代理
- ・遺留分侵害額請求への対応
- ・相続放棄・限定承認の手続き
- ・遺言書の作成・保管サポート
「まだ揉めているわけではないが、不安がある」という段階でのご相談も歓迎しております。お気軽にお問い合わせください。
法律を知った上で適切な対応を取ることが、ご自身の権利を守り、幸せな相続を実現することに繋がります。
相続問題は、早めに専門家に相談することが、ご自身にとっても、ご家族にとっても最善の選択です。どうぞお気軽にさくら横須賀法律事務所までご連絡ください。

横須賀地域(横須賀市、逗子市、葉山町、三浦市)を中心に、会社及び個人の借金問題(過払い金回収、自己破産、民事再生、任意整理)、遺産相続問題、離婚問題、交通事故などの分野を中心に活動している弁護士。「一つ一つの相談、打ち合わせ、書面作成等を、相談者様、依頼者様に寄り添って、丁寧に、かつ迅速に対応すること」を心掛けている。