疎遠な親族が亡くなった後、多額の債務が発覚したので、相続放棄をした事例
1 ご相談内容
長年疎遠になった父親が、5ヶ月前に亡くなった方の息子様らからのご相談。
父親が亡くなったのは、父親が死亡した直後に知らさられていたが、父親が死亡してから約5ヶ月経過した時点で、亡くなった父親には、多額の債務があることが発覚した。
今後、どのように対応すべきかとのことでした。
2 解決方法
当事務所の弁護士としては、相続放棄をすれば、お父様が残した債務を負担する必要はないという解決方法を提案しました。
この点、相続放棄は、相続を知ったときから、3ヶ月以内との規定が民法915条1項本文にあります。
しかし、本件のように、疎遠になっている親族が、亡くなった場合、親族の死亡を知ってから3ヶ月以上が経過してから、多額の債務の存在が発覚することは、多々あります。
そこで、最高裁判所は、昭和59年4月27日、「熟慮期間は原則として、相続人が」相続開始の原因たる事実及びこれにより自己が法律上相続人となった事実「を知ったときから起算すべきものであるが、相続人が、右各事実を知った場合であっても、右各事実を知った時から3ヶ月以内に限定承認又は相続放棄をしなかったのが、被相続人に相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、被相続人の生活歴、被相続人と相続人との間の交際状態その他諸般の状況からみて当該相続人に対し相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があって、相続人において右のように信じるについて相当な理由があると認められるときには、相続人が前記の各事実を知った時から熟慮期間を起算すべきであるとすることは相当でないものというべきであり、熟慮期間は相続人が相続財産の全部又は一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべき時から起算すべきものと解するのが相当である。」と判断し、上記のような事例を救済する判断を示しました。
本件事例も、父親死亡後、相続放棄の申述まで、3ヶ月以上経過しておりましたが、上記最高裁判例をもとに、家庭裁判所に、相続放棄の申述の受理を求め、無事受理されました。